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Workshop
Over-woud strings
Simulation of key touch
Stress of strings
Tension of strings
Tension of over-wound strings
Adding a reverse switch to a universal motor
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クラヴィコード用の巻線

Over-woud strings for clavichords

低音弦を短縮しているクラヴィコードでは、十分な張力を得るために巻線を使うことが必要になる場合が多くあります。2009年のクラヴィコードシンポジウムに5オクターブunfrettedの楽器を持って参加した時は、ルネサンス時代のモデルを除くと展示されていたほとんどの楽器に巻線が使われていました。それらの楽器と比較すると、当時巻線を使っていなかった私の楽器の低音が弱いのは明らかでした。参加していたオーストリアの製作家Thomas Glückが「君の楽器は低音が弱いんじゃない?」と話しかけてきたので、「巻線が必要だよね?」という話になり、彼にいくつか重要なヒントを教えてもらいました。巻線の必要性を痛感して帰国してから構想を練り始め、3年ほどかかって完成したのが写真の巻線機です。


巻線を外注するとドイツのVogelでは1本3000円以上もする上、寸法の指定などいろいろと面倒なことが多いのですが、自分で作る場合は楽器に合わせて細かく調整することも出来て大きなアドバンテージになります。

クラヴィコード用の巻線の注文を承ります。

open wound 1本2000円、close wound 1本2400円、一回の注文につき20本以上で5%、30本以上で10%OFFです。
そのほかに、張弦プランを作成する場合はその費用として1台あたり5000円いただきます。

 

注文・お問い合わせは、こちらのフォームからお願いします。
納期は、ほかの作業の状況にもよりますが、10本以下で1、2週間、5オクターブの楽器1台分では1ヶ月くらいです。

2024年2月、諸般の事情により割引率を改定しました。

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捻り弦

Twisted (twined) strings for clavichords

クラヴィコードの低音に巻線を使い始める以前は2本の金属線を互いに撚り合わせた弦が使われていたとされている。素線に比べるとバネのように伸び縮みしやすく、巻線でもタッチが硬く感じられることのある17世紀のショートオクターブの楽器と相性がいいようだ。

製作可能かどうか問い合わせがあったので、これはいい機会とこちらのページを参考に製作のための器具を作って試作してみた。

動力源として変速可能なドリルを使い、まずドリルを固定するための器具を作った。最初は足元のペダルでオンオフや変速もできるようにしてみたが、作業の間ペダルを踏み続けるのは使い勝手が悪いことに気がついて、速度を調整できるようにした上で足元ではオンオフのみにした。

ドリルをなるべくゆっくり回転するように調節して天井の梁に固定。2本の線を90度に維持するセパレーターを線の交点から離れないように持ってフットスイッチをオン。ゆっくりと撚り合わせた部分が下に伸びてくる。1.2mの弦ができるまで5分ほどかかるだろうか。見上げている時間が長いので首が痛くなる^^;

クラヴィコードのタッチウェイトのシミュレーション

Simulation of key touch weith 

クラヴィコードのキーを押した時に弦に押し返される強さは、弦長(speaking length)、張力、ヒッチピンからタンジェントの距離(after length)、キーのバランス位置とタンジェントの位置によって決まる。張力以外は楽器の設計段階で決まってしまうため、あらかじめシミュレーションしておきたい。そこで工房ミネハラさんのこのページを参考に、次のような式を立ててみた。

T: 張力
R: タンジェントによって弦が持上げられる距離
Sl: 弦長(speaking length)
Al: ヒッチピンからタンジェントの距離(after length)
Lft: キーフロントからタンジェントまでの長さ
Lfb: キーフロントからバランスピンまでの長さ
Fpb: キーフロントが弦に押し返される力

keytouch.gif

この式を元に計算した結果をグラフに表すとこんな感じ。(縦軸の数字はタンジェントが弦を2mm押し上げる時に必要なキー先端に加える力)
これはかなりバランスがとれている状態
BB-d3 fretted

keytouch_chart.gif

自分で一から設計する場合は、上のグラフのようにバランスよく設定することが可能だが、オリジナルを元にした場合は難しくなる。
FF-f3 unfretted J. H. Silbermann 1775

keytouchJ_H_Silbermann1775.gif

ブルーのラインがオリジナル、オレンジがタッチが弱すぎると思われる部分を修正したラインで、ヒッチピンの位置やキーバランスをあれこれ動かしてみた結果。苦労した割には弱い部分があまり改善されていない。最低音が急激に持ち上がっているのは楽器の小型化のためにその部分のafter lengthが短くなっていることによる。

弦の応力 Stress of strings

張力を計算しておくと楽器のコンディションを知ったり、張弦のプランを立てたりする際に便利。
まず弦の応力(stress)について。応力とは物体内部に生じる力のことで、弦の場合は断面積1平方ミリあたりの張力を言う。これは弦の密度、弦長、周波数の3つのパラメータで決まる。ピッチ: 415、弦の材質はブラス(密度8.54g/cm^3)、c2=254.5mmでジャストスケール(1オクターブ離れた2本の弦長が2:1の関係)の楽器があったとすると応力は 55kg/mm^2 で一定になる。

just_scale.gif

実際の楽器はジャストスケールに比べて低音弦が短縮されたり高音にピークがあったりして応力は一定ではなく、スケーリングの違いによって特徴的なカーブを描く。


17c. イタリアンと18c. フレンチの応力をグラフにしてみると下図のようになる。

stress.gif

イタリアンは高音にピークがあって中音でいったん下がりバスにかけて上がっている。この意味するところは、高音から中音へはオクターブ下がった時に弦長は2倍より短かくなり、中音からバスにかけては2倍より長くなっているということ。この特徴からイタリアンの細身のアウトラインが生まれる。最低音で折れ曲がって下がっているのはブリッジが折れ曲がっている部分。


フレンチは中高音の応力がほぼ一定の部分(ジャストスケール)と、バスに向かって下がって行く(弦長が短縮される)部分とからなっていることがわかる。バスで応力が高くなる部分は、弦がスチールからブラスに変わるところ。


このように応力をグラフにすることで、楽器のキャラクターが一目瞭然となる。

弦の張力 Tension of strings

スチールあるいはブラスなどの銅合金でできた普通の弦の張力の計算

fomula_T&S.gif

S: stress

T: tension

f: frequency

L: string length

ρ: density

d: diameter

巻線の張力

Tension of over-wound strings

ピアノを含むチェンバロやクラヴィコードなど多くの有弦鍵盤楽器の低音部分は、弦長がジャストスケールより短縮されている。短い弦で張りのある低音を出すためには弦を太く(つまり重く)してある程度の張力をかける必要があるが、太い弦は柔軟性が失われて倍音が出にくくなる。スチール弦を張った楽器でも低音にブラスを使うのは、一つにはより比重の重い弦を使うことで応力を上げる意味合いがあるが、スチールより柔らかいブラスを使うことで太い弦でも倍音が出やすくなるようにする目的がある。

チェンバロの最低音域でレッドブラスを使うのは、比重はわずかに大きくなるだけなので応力を上げるというより、より太い弦により柔軟な素材を使うことで倍音を出やすくするためであると考えられる。

 

チェンバロよりさらに低音弦が短縮されているクラヴィコードでは、弦の柔軟性を保ったまま重量を増やして十分な張力をかける方法として巻線(over-wound string)が考案された。ハンブルクでは巻線の代わりに4ft弦を張って倍音をプラスしたクラヴィコードが作られた。

 

クラヴィコードでは、張力と芯線の引っ張り強さとのバランスを取るため銅線にスキマをあけて巻くのが一般的で、このような巻き方をopen-woundと呼ぶ(ピアノの巻線のようにスキマなく巻くのはclose-wound)。そのほとんどは芯線に真鍮、被覆線に銅という組み合わせである。

以下が巻線の張力の計算式

woundstring_tension3.jpg
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T: tension of  stri

Tw: tension of  wound string

F: frequency

L: string length

λ: linear density of string

g: gravity acceleration 

 

Dc: diameter of core wire

Dw: diameter of wound wire

P: number of turns per unit length

Lw: length of wound wire per unit length

λw: linear density of wound wire

ρw: density of wound wire

 

λc: linear densit of core wire

ρc: density of core wire

ミシンモーター(交流整流子モーター)を逆回転させる

Adding a reverse switch to a universal motor

 

ミシンモーターは補修用のパーツとして手に入りやすいが、通常は回転方向が決まっていて購入時に回転方向を選択するようになっている。ミシンモーターを巻線機の動力として使っていると、ちょっと失敗して逆回転したい時がある。調べてみると逆回転が可能なように改造できることが分かった。

ミシンモーターのような交流整流子モーターは、ステーターのコイルとローターのコイルとが直列になっている。逆回転させるには、2つのコイルの配線を入れ替える。

 

改造方法としては、ブラシにつながっているステーターのコイルの線を外して延長した線とブラシに新たに接続した線、それぞれ2本の線を外部に引き出す。そして6Pスイッチなどを使ってコイルとブラシとの接続が入れ替わるように配線する。ステーターのコイルをa-a'、ローターのコイルをb-b'としてa-a'-b-b'を正回転とするとa-a'-b'-bが逆回転になる。

線を引き出すためにはモーターのケースの適当なところに穴を開けて、ゴムブッシュなどで線を保護する必要がある。

Twisted (twined) strings
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