ギリシア語由来の音楽用語の続き
（現代語と古代ギリシア語との間にラテン語が介在している例が多いけれどラテン語は省略している）
シンフォニーやポリフォニーのフォニー phony は φωνή プォーネー 声 から来ている
電話の phone は φωνή のローマ字転写そのままの綴り
polyphony < πολύς ポリュス many + φωνή 多声音楽
monophony < μόνος モノス alone, solitary + φωνή 単声音楽
homophony < ὁμός ホモス same + φωνή ポリフォニーと違ってホモフォニーは各声部は旋律的に同じ動きをする
symphony < σύν シュン with + φωνή 響きを合わせるというような意味になるだろうか
σύν の着く現代語は他にもいろいろ
たとえば
symposium < συμπόσιον シュンポシオン < σύν + πόσις ポシス drinking-party つまり元来の意味は宴会www συμπότης シュンポテース 飲み仲間 、宴会の同席者 という語もある
楽器では
organ < ὄργανον オルガノン 元来は道具一般を指す語で人体の器官の意味もあり、手を ὄργανον ὀργάνων オルガノン オルガノーン と呼んだ。ὀργάνων は複数属格なので「道具の器官」と訳して合っているだろうか
guitar < κιθάρα キタラー リラやリュートのような弦楽器を意味し cither シター 、zither ツィターもこの語から来ている Ὅμηρος ホメーロスのὌδύσσεια オデュッセイアの中で、歌人のΦήμιος ペーミオスがかき鳴らすのが κιθάρα で、竪琴と訳されている
monochord < μονόχορδος モノコルドス μόνος + χοδά 弦 これは楽器というより実験器具だったようで、μονοχορδίζω モノコルディズドー モノコードで音程を測る という意味の動詞もある
synthesizer < synthesize < synthesis < σύνθεσις シュンテシス < σύν + θέσις 共に据えることから総合、結合、構成、合成などを意味する語で、日本語ではシンセサイザーのセはs音だが本来はθの転写なのでth
psalterium < ψαλτήριον プサルテーリオン ψάλλω プサッロー 指で弦楽器を演奏する + τήριον 動詞に付いて中性名詞を作る接尾辞 指で弦をつまびく楽器だが、κιθάρα が膝に載せて立てて演奏する小型のハープのような楽器で、ψαλτήριον は水平に置いて演奏する楽器だったようだ
lyre < λύρα リュラ もう一つ古代からある弦楽器のリラ。ライアーと読むとハーディガーディを指すことにもなるが、古典ギリシアの時代は亀の甲羅の共鳴胴に弦を張った楽器と辞書にはあり、wikipedia には詩の朗読の時に使われたアマチュア用の小型の楽器で大型のキタラがプロ用とある
調べていたら古代ギリシアの弦楽器として φόρμιγξ プォルミンクス という楽器が出てきた。リラとキタラの中間に位置するとwikipediaにはあるが、ホメロスやヘシオドスではアポロンの持つ竪琴がこれだった。神の持つ竪琴がプォルミンスクで宮廷歌人の持つ楽器がキタラとされていたのだろうか
（ヘシオドス『ヘラクレスの盾』 202-203）
ἐν δ᾽ ἄρα μέσσῳ エン ダラ メッソーィ そして真ん中で
ἰμερόεν ヒメロエン 愛らしく
κιθάριζε キタリズデ （キタラを）奏でていた 動詞 κιθαρίζω キタリズドー の直接法能動態未完了過去3人称単数
Διὸς καὶ Λητοῦς υἰὸς ディオス カイ レートゥース ヒュイオス ゼウスとレトの息子（アポロン）は
χρυσείῃ φόρμιγγι クリュセイエーィ プォルミンギ 黄金の竪琴を（道具、手段の与格）
もうひとつ βάρβιτος バルビトス または βάρβιτον バルビトン という楽器もあって、これはキタラの低音楽器と説明されている
すでに古代において多様な楽器が使われていたことにあらためて驚いている
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