フォノイコライザーの出力インピーダンスと高域の減衰
- yasushi-takahashi
- 2 日前
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更新日:19 時間前
フォノイコライザーの入力インピーダンスについてはMMカートリッジの特性に合わせて47kΩとするのが標準的な仕様で、バリレラではもっと低い方がいいらしいのでけっこう気にする人も多いと思う
一方で出力インピーダンスは検索してみてもそれに触れているものは少ない
いちおうロー出しハイ受けになっていればそれほど影響はないということなのだろうか
出力インピーダンスについてはぺるけさんの記事が分かりやすい
LTspiceで出力インピーダンスをシミュレーションする方法がわかったので、いくつかの回路で試してみた
通常は出力に後続機器の入力抵抗を負荷としてシミュレーションするけれど、出力インピーダンスを見る時は負荷抵抗の代わりに交流電流源を置いてSmall Signal ParametersのAC Amplitudeを1としてacコマンドを実行し、波形ビュワーで負荷に置いた電流源で出力電圧を割ったグラフを表示する
そのままでは波形の縦軸がデシベルになっているので右クリックしてRepresentationをDecibelからLinearに変更すると単位がΩになる
ぺるけさんの差動ラインプリアンプ(新版)は出力インピーダンスが約2kΩ 1V at 1kHzと製作記事に書かれているのでこの回路でシミュレーションしてみる


波形図から1kHzは2.1kΩちょっとと読めるけれどmeasureコマンドで数値を取得する
.measure ac output_imp find v(vout)/i(i2) at 1k
このままではデシベルで出力されるので
.option meascplxfmt=polar
という呪文を付け加えるとΩで出力される
結果は2123.16Ω(下の画像の赤線部分)でぺるけさんの約2kΩと合致するのでこの方法で間違っていないようだ

同じ方法でぺるけさんの12AX7フォノイコライザーアンプ Version2


結果は1kHzで640Ωとたいへん優秀な数値
NFBには出力インピーダンスを下げる効果もあるのでそれが活きているようだ
これはNF型の特性なのだろうか、水平部分がなくて指数関数のようなカーブで高域でほぼゼロになっている
部品は集めたもののまだとりかかれていない自作カーブ可変イコライザーではシミュレーションの結果3.4kΩとなった

終段を出力インピーダンスの低いSRPPとしてこの数値はどう評価したいいいのだろう
3.4kΩという出力インピーダンスは実際にはどんな影響を生じるのか計算してみた
これはスプレッドシートで簡単に計算できる
1mのシールド線で後続機器と接続するとして線間容量を100pF/mとするとアナログ盤の収録周波数の上限とされる15kHzでのリアクタンス(抵抗成分)は
1/(2πfc)=1/(2πx15000x10^-10)=106kΩ
後続機器の入力インピーダンスを50kΩとするとシールド線のリアクタンスと並列になって
50kΩ//106kΩ=34kΩ
出力インピーダンスの3.4kΩが直列、30.7kΩが並列になるので
34/(3.4+34)=0.91
と15kHzで減衰率0.91、0.83dB減衰のアッテネーターになる
同じ条件で出力インピーダンス640Ωのぺるけさんの12AX7 version2のイコライザーは減衰率0.98、わずか0.16dBの減衰にとどまる
問題はこれがモノラルフォノイコライザーであることで、モノラル出力をステレオプリアンプの左右に振り分けて接続すると入力インピーダンスは半分の25kΩになるので減衰率は0.86、デシベルにすると1.35dBの減衰になってしまう
真空管式CR型フォノイコライザーの出力インピーダンスがどのくらいになるものなのかこれだけでは判断がつかないので、ネットで検索してこちらの回路をお借りしてシミュレーションしてみた
1段目12AX7、2段目12AT7でSRPPで挟んだCR型となっている


結果は出力インピーダンス5.3kΩ
同じSRPPだが12AU7に比べていくぶん内部抵抗の高い12AT7を使っていることの反映だろうか若干高い数値になっている
50kΩ負荷の場合15kHzで減衰率0.87、1.26dBの減衰となった
もうひとつこちらの回路をお借りして
6922(6DJ8/ECC88)を使った2段のCR型


出力インピーダンスは3.14kΩ
SRPPではないにもかかわらず比較したCR型の中ではいちばん低い数値になったのは6DJ8という内部抵抗が低い球を使っているからだろうか
複雑な回路にしなくても素性のいい球を使えばシンプルな回路でこの結果というのはなんだか勉強になった気分
この球は直線性もいいので歪み率も低いだろう
このくらいの数値では50kΩ負荷で15kHzが減衰率0.92、0.77dBの減衰なのでこれを気にするかどうか
CR型イコライザーの場合はなるべく低容量のシールド線を最短でプリアンプと接続というのはセオリーになるだろう
NF型と比較してCR型の音色の特徴が語られるが、NF型に比べて出力インピーダンスが高くそのために高域が減衰すればそれは音色として感知される可能性はある
出力インピーダンスを低くできるSRPPでこの数値だから、そうでない回路や内部抵抗の高い球の場合はさらに高くなるので高域の減衰はもっと大きくなる
CR型の場合はなるべく内部抵抗の低い球を使うこと、その上で可能ならSRPP、内部抵抗の高い12AX7などは向いていないというのが結論になりそうだ
いろいろシミュレーションしてみたが、カーブ可変なんだから高域低下が気になるならロールオフを1段上げればいいことに後になって気がついた😅
それにノイズの多いSPなどの古いレコードを聴くのだから多少高域が落ちた方がノイズが気にならなくなることもあるだろう
長い間パソコン上でフォノイコライザーについて遊んでいたのでぼちぼち製作に入りたいのだがちょっと今は無理そうな気配🥺
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