チェンバロ設計の肝はスケーリング、つまり弦の長さをどう設定するか。
弦長が決まればブリッジとナットのカーブが決まり、楽器のプロポーションも決まる。
その後、張力がどのようにかかるかを考えながら内部の補強材の位置や数を決め...と楽器の詳細を詰めていく。
弦長は低音は長く高音は短くなるが、基本は1オクターブ離れた2本の弦の長さが1:2になる。それではその1オクターブの間にある弦の長さはどう決めるのか?
そこで応力という考え方が重要になる。
応力(stress)は、物体内部にかかる力をいうが、弦の場合は断面積1㎟あたりにかかる力。張力は弦の太さによって変わるが応力は音高、弦の比重、弦の長さの3つのパラメーターで決まり、音高と比重は決まっているので変化するのは弦長のみ、それをグラフにして応力を読み取り、そこから弦長を割り出す。
応力のグラフについてはこちら解説しているが、どんなコンセプトの楽器にするかを考えながら何種類か応力カーブを描いてみて、それをスプレッドシートに入力して弦長を割り出し、それが実際のブリッジのカーブやナットの形状に無理なく乗せられるようになるまで応力カーブを修正しながら繰り返す。
チェンバロの設計に応力を利用する方法を教えてくれたのは、昨年亡くなったチェンバロ製作家の高橋辰郎氏。私の師匠。
チェンバロ製作を始めたばかりの20代の頃にスケーリングと応力との関係について教えてもらい、当時まだMS-DOS時代のパソコンに計算式を入れて設計を始めた。
コピー楽器を作るべからず、というのが師匠の教えだったが私はその教えに背いてコピー楽器の製作を手がけた。電話をする度にそのことでお小言を頂戴した。私としては先人に学びたいという気持ちから始めたことだったが...
師匠が亡くなってもうすぐ1年。今回はコピーでなく1から設計することになりそうだと報告したら何と言われたかな、と考えている。
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